キャビンアテンダント(客室乗務員)を目指している学生の方から「キャビンアテンダントになるためには、留学は必要ですか?」と質問を受けることがよくあります。
キャビンアテンダント(客室乗務員)として乗務している人の中には、留学経験のある人も多くいます。しかし、留学とひとくくりに言っても、夏休みや春休みなどを利用した2週間〜1か月程度の短期留学、ワーキングホリデーや語学留学で数か月〜1年程度から、専門学校や海外大学を卒業するという2年以上の長期留学まで様々です。
留学することによってキャビンアテンダントになれるチャンスが広がるのかというと、それは人それぞれと言わざるを得ません。客室乗務員の面接試験でもよく取り上げられるように、重要なのは「留学をした」ということではなく、「留学によって何を学び、身につけたのか」ということだからです。
そこで今回は、キャビンアテンダントを目指す上での留学の必要性について考えてみたいと思います。
キャビンアテンダント(CA)に求められる英語力
キャビンアテンダントとして仕事をするにあたって英語力は必須です。日本人客室乗務員を採用している航空会社の募集要項に記載されている必要な英語力は以下の通りです。
TOEIC600点程度以上
- ANA(エアージャパン・ANAウイングスなどグループ会社を含む)
- JAL
- Peach Aviation
- アシアナ航空
- 大韓航空
- チャイナエアライン
- バニラエア
TOEIC700〜730点程度
- ガルーダインドネシア
- フィンエアー
英語が堪能であること
- エティハド航空
- エミレーツ航空
- カタール航空
- キャセイパシフィック航空
- シンガポール航空
- 香港航空
- ルフトハンザドイツ航空
- KLMオランダ航空
これらを見てもわかるように日系航空会社の多くはTOEIC600点程度を英語力の基準としているのに対し、外資系航空会社ではより高い英語力を求めています。
外資系航空会社では、海外都市にベースがあり海外で生活をする必要があることや、訓練、国籍の異なる乗務員とのコミュニケーションにも英語が必要となるため、TOEICの点数よりも英語でしっかりとコミュニケーションを取れることを重要としています。
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留学のメリットとデメリット
留学には費用と時間が必要になります。長期留学を行うと就職活動の時期を逃してしまうこともあるかもしれません。留学をすることで就職活動に有利になるのかという疑問を持つ人も多いと思います。留学経験があるというと英語(語学)が堪能と捉えられ、自ら英語(語学)力に対するハードルを上げてしまうこともあります。
では、長期留学と短期留学のメリットとデメリットにはどのようなことがあるでしょうか。
留学のメリット
長期留学のメリット
- 語学力の向上・コミュニケーション能力の向上
- 専門学校等の専門課程を修了することで得られる学位や資格(CertificateやDiploma)、大学・大学院等を卒業することで得られる学位(BachelorやMaster等)の取得が可能
- 自国の文化を見つめなおすことができる
- 現地の人や生活に触れることで異文化を学び、国際感覚を身につけることができる
- 挑戦の幅が広がりキャリアアップにつなげることができる
短期留学のメリット
- 夏休みや春休みなど時間がある時に気軽に行くことができる
- 準備に時間がかからず費用が安い
- モチベーションを保ちやすい
- 異文化体験ができる
留学のデメリット
長期留学のデメリット
- ビザの取得等の下準備に時間が必要
- 高額の費用が必要になる
- 通っている学校を休学する必要がある
- 新卒での就職活動の機会を逃してしまうことがある
- モチベーションを保ちづらい
短期留学のデメリット
- 語学の習得には至らない
- 現地の人や生活と触れる機会が少ない
- 慣れた頃に帰国する
長期留学は、しっかりとした目的と計画、準備期間、高額の費用が必要になるだけでなく、休学や退職など現在の生活を変える必要があります。
しかし、学ぶ時間が多い分、現地の人や生活に触れながらより深く学び体験することが可能です。語学や知識だけにとどまらず、文化に対する理解も深まるので、より広い視野を持って物事を見ることができるようになります。
長期留学ではほとんどの人がホームシックや語学力の伸び悩み、モチベーションの低下、生活の難しさ等を経験します。しかし、それを乗り越えることで精神的な強さや柔軟性を身につけていきます。これらの経験は、その後の人生においても大きな糧となるはずです。
また、長期留学に必要な学生ビザを取得しているとアルバイトが可能で、学びながら仕事をすることもできます。学校以外の社会とのつながりもできるため、より幅広い体験ができます。
大学・大学院への進学を考える人にとって長期留学は大きな覚悟が必要となりますが、卒業することでその後のキャリアに大きな差がつくこととなるでしょう。
短期留学は、予算に限りがあるという人でも費用の工面がしやすく、休暇を利用して1週間単位で参加することができるため、現在の生活を大きく変えることなく異文化体験ができます。
語学の習得については個人差がありますが、一般的に現地の人が話していることを聞き取ることができるようになるまでに約3か月、頭の中で母国語に訳することなく理解でき受け答えが可能になるまでには約6か月、日常会話に支障がないまでに語学力を向上させるためには約1年かかると言われており、短期間では語学力を高めるまでに至らないというのも現実です。
また、長期留学でほとんどの人が経験するホームシックや語学力の伸び悩み、異なる生活や文化間での葛藤等を感じる前に帰国するということが多く、海外旅行の延長という形に近いかもしれません。 しかしその分新鮮な感覚を持ち続けることができるので、モチベーションを保ちやすいと言えます。
CAとして勤務する現場で差は出る?
日系航空会社の客室乗務員として乗務をする場合、乗務に必要な基本的なサービス英語は訓練中にしっかりと学びます。国内線で英語を使用することはほぼなく、国際線では路線によって外国人乗客の割合が変わるため使用頻度はまちまちで、長期留学を経験した人と短期留学を経験した人、または全く留学経験がない人でそれほど差が出るわけではありません。ただ、イレギュラー時の外国人乗客への対応力や丁寧な言い回しが必要な場面等では差が出ることがあります。
外資系航空会社の客室乗務員として乗務する場合、日本人乗客と接する時以外、基本的なサービス、乗務員同士のコミュニケーション、イレギュラー時の対応等、全て英語が必要になります。また、海外ベースとなれば異国での生活となるため留学経験が役立つこととなるでしょう。
留学先を決める手順
留学というと多くの人が、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージランド等の英語圏を選んでいます。ある程度の英語力がすでにあり、学びたい専門課程が決まっている場合には、ヨーロッパ、アジア等の英語以外の言語を使用する国への留学を決める人もいます。
同じ英語でも国によってアクセントが異なったり、言い回しが異なったりします。また、国によって必要な費用も気候も様々、都市と地方では生活に大きな差があります。そこで、まず留学の第一歩となる留学先を決める手順を見ていきたいと思います。
国を比較する
学びたい言語や体験したいこと、文化を比較しましょう。夜に一人で出歩けるか等、治安もしっかりと考慮する必要があります。
費用で比較する
為替や物価によって大きな違いがあります。授業料、滞在費、生活費、ビザ代、保険や航空券等、必要な総費用を算出して比較しましょう。
気候を比較する
大雪が降ったり、1年中暑い、1年を通して過ごしやすい気候等、特に長期留学を考えている場合には気候の比較も忘れずに行いましょう。
学校と授業内容を比較する
少人数制を導入している学校または大規模な学校、最低限必要な留学期間や入学の時期、進学を考えている人は専門学校や大学に併設している学校、専門課程に進みたい人は学びたい分野に強い学校というように、学校の特徴と授業内容を比較しましょう。
趣味や好きなことで比較する
海のあるところがいい、ファッションが好き、アートが好き、大自然を感じられるところ等、より充実した時間を送れるよう、趣味や好きなことで比較しましょう。
都市と地方で比較する
都市部と地方では生活環境が異なります。都市部では何でも手に入り不便はあまり感じませんが、その分物価が高い傾向にあります。地方では、日本人が少なく現地の生活にどっぷりと浸れますが、その分苦労も多いかもしれません。どちらが自分に合っているのか、どのような体験をしたいのかを比較しましょう。
必要な英語力を比較する
英語のレベルによってクラス分けをしている学校もあれば、そうでない学校もあります。専門課程に進む際には入学時に必要な英語力が定められている場合もあります。今のままでいいのか、もう少しレベルアップしないといけないのか、必要な英語力を比較しましょう。
客室乗務員を目指している皆さんには、エアラインの専門知識を学べるエアライン科やツーリズム科もおすすめです。どの国に行けば学べるのか、どのような内容が学べるのか、費用はいくらか、修了するとどうなるのか、集めなければいけない情報がたくさんあります。
留学先の決定をスムーズに進めるためにも、まずはしっかりと情報収集を行い、「なぜ留学したいのか」「留学中にしかできないことは何か」「留学後のビジョン」について考えてみましょう。
留学におすすめの時期
短期留学の場合は、夏休みや春休み等の長期休暇を利用して行くことができますが、長期留学の場合には、休学するのか、休職するのか、退職するのか等を考慮しながら決める必要があります。
近年、就職活動の時期が早まってきており、大学生の場合は3年生になってすぐ、専門学校生や短大生の場合は1年生のうちに始めるという場合がほとんどです。その時期に留学を計画すると就職活動に支障をきたしてしまうことになります。留学中にエントリー等の活動を行うという人もいますが、「焦りを感じてしまう」「他の学生と差がついてしまう」等、留学を楽しめない状況に陥りかねません。
大学生が短期留学をする場合、1年次の夏休みや春休み、2年次の夏休みがおすすめです。1年次の夏休みに1~2週間の留学を体験し、2年次の夏休みに1か月間の短期留学を行うということもできます。短期間の参加が可能なので、1か国ではなく2か国への留学を行うことも可能です。
長期留学の場合は、就職活動まで時間に余裕のある2年生の後期に半年間、または2年次を休学して1年間、3年次の前期に半年間など期間に合わせて選ぶことができます。留学先で取得する単位を認定してもらえる認定留学を行っている大学もありますので、大学を選ぶ際の参考にすると良いでしょう。また、就職活動を行い、内定を頂いてから卒業までの間に短期留学を経験する卒業前留学もおすすめです。新卒での就職にこだわらないという人は、卒業後という選択肢もあります。
留学先の探し方
留学先を探すために情報収集を行ったけれどなかなか決めることができないという人や、多くの選択肢がありすぎて自分に合った形がわからないという人も多いと思います。留学先の探し方をいくつかあげておきますので参考にしてみてください。
学校で相談
各学校の学生課、留学制度のある学校の場合は留学課等、学校で相談してみましょう。提携校の紹介や、奨学金制度の活用や単位の取り扱いについて、留学前、留学中、留学後においても手厚いサポートをしてくれます。
留学紹介サイトの活用
学校に留学制度がなく自力で探すのは不安という人におすすめなのがエージェントと呼ばれる留学紹介サイトです。世界各国を網羅している大規模なエージェントから、ひとつの国を専門に扱っている小規模なエージェントまであり、行きたい国や専門分野よって活用するエージェントを選ぶことができます。たくさんあるエージェントの中から活用するエージェントを選ぶ際には、現地に支店があるエージェントを選ぶことをおすすめします。留学前から現地の詳細情報を提供してくれたり、留学中に困ったことがあった時にサポートを受けることができるので安心です。
自力で探す
ある程度の英語力がある場合や、大学・大学院進学を目的としている場合には、StudyLinkやGladschools.comのような各国の留学生を受け入れている学校や留学プログラムを検索できるサイトがおすすめです。また、日本学生機構のように海外留学のための奨学金制度を検索できるサイトもありますのでぜひ活用してみてください。
元CAの留学体験
CAとして働いていた私が進学を視野に入れて長期留学を決めたのは、在学時に半年間の交換留学に参加したことがきっかけです。世界各国の留学生と出会い切磋琢磨する中で、もっと学びたい、もっと専門知識を身に付けたいと思うようになり、卒業後に長期留学を行いました。
私が留学中に身を持って体験し、客室乗務員として乗務する際にも何度も思い出し、今でも忘れずに心に留めている言葉があります。
それは、
「It’s not wrong. It’s just different.(違うということと、間違っているとうことは違う。)」
という言葉です。
人は、自分の考えと違うことや自分が育ってきた環境で身につけた習慣や文化と異なることに出会った時、簡単には受け入れることができずに批判してしまうことがあります。
「日本(自国)では〜。」「日本(自国)だったら〜。」
日本人留学生だけでなく他国からの留学生もよく口にしていました。この考え方を持ち続けている以上、長期留学を経験したとしても学ぶことは少ないでしょう。たとえ、短期留学でも、異なることや新しいことをどんどん受け入れることができれば学ぶことは多いはずです。
語学力を伸ばすということだけに力を注ぐならば、留学しなくても様々な方法で習得することが可能です。日本にいながら語学力を磨いた方が、努力したのだろうという印象を受けるでしょう。反対に、留学経験がありながら語学力が伴っていないと、留学中何をしていたのだろうという印象を受けかねません。
私は留学を通して、語学力の向上だけでなく、異文化や生活に触れて様々な経験をする中で、タフな精神力や臨機応変に対応する力、自ら考え決断する力を育てながら、「そんな考え方もあるんだ」と、違いを受け入れて尊重することを学びました。
留学前、もっとグローバルに!と思っていた割には、案外日本人っぽさを捨てられなかったとも思います。同時に、日本を離れたからこそわかる日本を学ぶこともできました。
留学後、社会に出て仕事をする頃には、同級生とは数年の差がついていたため、遠回りしたと言われることもありました。20代のうちの数年の差と考えると大きいような気がしますよね。しかし、人生という大きな単位で考えると、たった数年なのです。たった数年で現在の私の基礎を作り上げてくれた留学は、人生のターニングポイントになったと確信しています。
客室乗務員を目指す上での留学の必要性。最初にもお話ししたように、それは、人それぞれです。「留学で何を学び、何を身につけたのか」ということ次第なのです。結局のところ、語学はツールです。留学が必要かどうか迷っている人は、「留学で何を学び、何を身に付けたいか」「語学を生かして何をしたいのか」というところまで考えてみると答えが見えてくると思います。
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この記事を書いたCA(客室乗務員)は・・・
桜子さん
海外の大学へ留学後、旅行やビジネスコミュニケーションの仕事を経験し、日系航空会社の客室乗務員へ。アジア・中東・欧州での生活経験あり。