客室乗務員を目指す皆さん、今年度もANAとJAL の客室乗務員新卒募集がはじまりましたね。
ANAの募集人数は550名、JALの募集人数は400名と、今年度も客室乗務員を目指す多くの皆さんにとって合格をつかむチャンスが増えそうな大量募集となっています。
今年度の募集では、2020年の東京オリンピックを前にして、今後も伸び続けるインバウンド観光客の増加とグローバル化に対応し成長していける人が必要になり、中でも、日系大手航空会社を利用する外国からのお客様の多様なご要望にお応えするためにも、個々の客室乗務員の英語のレベルを上げることは急務になってくるのではないかと考えられます。
そこで今回は、客室乗務員になるにはどのくらいの英語力が必要なのか、目指すべきTOEICの点数を含め、乗務で必要になる英語やその勉強法などをお話ししたいと思います。
航空会社別のTOEICスコア基準
客室乗務員の募集要項で求められる英語力の基準として示されていることが多いのが、TOEICのスコアです。では、客室乗務員を目指すためには何点くらいを目標にすればよいのか、日系大手2社を含む各航空会社が募集要項に表記している TOEICの点数を見てみましょう。
TOEIC550点程度
- AIR DO
- J-AIR
- 中国南方航空
- フジドリームエアラインズ
TOEIC600点程度以上
- ANA(エアージャパン・ANAウイングスなどグループ会社を含む)
- JAL
- Peach Aviation
- アシアナ航空
- タイ国際航空
- 大韓航空
- チャイナエアライン
- バニラエア
TOEIC700〜730点程度以上
- ガルーダインドネシア
- フィンエアー
英語が堪能であること
- KLMオランダ航空
- エティハド航空
- エミレーツ航空
- カタール航空
- キャセイパシフィック航空
- シンガポール航空
- スカンジナビア航空
- 香港航空
- ルフトハンザドイツ航空
このように、日系航空会社をはじめ国際線の就航がある航空会社においては、TOEIC600点程度以上を目安としていることがほとんどです。また、入社後の訓練を全て英語で行う外資系航空会社では、さらに高い英語のレベルを求められることが多く、TOEICの点数にはとらわれず会話力に重点を置き「英語が堪能であること」を募集要項に表記している航空会社が多いことがわかります。
TOEICのスコア基準を満たさないと合格できない?
「客室乗務員になるための倍率」でお話しした通り、一度募集が出ると5000人から10000人ものエントリーがある客室乗務員の採用試験では、残念ながら全ての応募者を面接に呼ぶことができません。そのため、書類選考の段階でどうしても基準を設けて選定しなければならないという現状があります。
日系航空会社の新卒募集の場合、入社後に社会人としての知識を1からつけながら客室乗務員として成長していきます。新卒応募者のスタートラインは皆ほぼ同じです。TOEIC600点程度を基準としている航空会社に応募する場合、それより高い点数を持っていれば、学生時代に力を入れて英語の学習をしたということをアピールできる材料になり、書類選考を通過する可能性が高まるかもしれません。
特に、国際線拡大に力を入れているANA合格者の英語力は年々高くなっており、TOEIC700点を超えているという人も多数います。もちろん、TOEIC600点程度は目安ですので、たとえTOEIC600点に満たないとしても、英語力以外に自分をアピールすることができれば書類選考を通過する可能性は大いにあります。その場合は、入社までに英語力の向上を指示されることもあります。
既卒募集の場合は、英語力だけではなく社会人として培ってきた知識や経験、多様な個性を重視され、英語力の基準を満たしていないとしても即戦力として活躍できるとしっかり自分をアピールできれば、TOEIC600点以下で客室乗務員として働いている人も少なくありません。また反対に、実務で身につけた英語力を武器に受験する人が多いのも既卒募集の特徴で、基準とされるTOEICの点数はあまり当てにならないことも多いようです。
実務で必要な英語は?
では、客室乗務員として乗務するにあたってどのような英語の能力が必要になってくるのでしょうか。
受け答え(聞く・話す)能力が必要
日系航空会社の場合、限られている印象があるかもしれません。機内で使用するサービス用語は訓練時にしっかりと叩き込まれるため、日常会話程度の英語力があればほとんどの場合は対応できると思います。
ただ、ANAやJALグループをはじめLCCにも多数の外国籍クルーが在籍しており、ブリーフィングや機内でのやりとりは英語で行うことも増えました。パーサーやクラスインチャージとして乗務するためには、緊急時やフライトでお客様にお伝えしなければならない情報があった際に、さっと英語で説明できるくらいの英語力が必要となってきます。
外資系航空会社では、初期訓練、定期訓練、日常生活も含め他のクルーとのコミュニケーションは全て英語で行う必要があります。多国籍のクルーと乗務を共にする際に重要なのは、自分の意思を伝えることと相手の意見を聞くこと。きっとわかってくれるだろうと思わずにしっかりとコミュニケーションをとる必要があります。また、機内でも様々な国籍のお客様の多様なご要望に対応しなければならず、さらに高度な受け答えの能力が必要となります。
英語の受け答えは、すぐにできるようになるものではなく、何度も場数を踏んで慣れていく必要があります。客室乗務員を目指すと決めた時から、徐々に英語に触れる機会を増やしていくことで日常生活の中でも英語力の向上は可能です。本人の努力次第でどんどん向上できるのが語学の面白いところでもあります。
英語の勉強法
客室乗務員を目指している皆さんの中には、英語が苦手という人も少なくないと思います。英語が苦手な受験生からも「留学は必要か」、「TOEICでさらに高得点を目指すべきか」という質問をよく受けます。
留学は必要ない
客室乗務員として乗務している人の中には、1か月程度の短期留学を経験している人は多数いますが、1年〜数年という本格的な留学経験のある客室乗務員は実はそれほど多くありません。1か月程度の短期留学は、違う環境に身を置いて、カルチャーショックを受け、自身の考え方を少し変えるきっかけになったり、ひとりで海外へ行った、違う国籍の友達ができたという経験値は上がるかもしれませんが、英語力を習得するまでには至らないのが現実です。TOEICの点数を飛躍的に伸ばすほどの英語力を身につけるには、最低でも4〜6か月、会話力を伴い様々なシーンに対応できるようになるまでには1年は必要となります。
そんな時間はない…と心配しなくても大丈夫です。留学をしなくても日常生活の中で、英語のニュースをテレビやラジオで聞く、英語の新聞やニュースを読む、映画を英語の字幕付きで見る、ポッドキャストで英語のストーリーを聞く、英語学習アプリを使うなど英語に触れる機会を増やし、「耳から聞いてリピートする」、「聞いたことを紙に書き出す」などのトレーニングを続けることで、聞く力と話す力を同時に身につけることができます。また、英会話学校に通ってネイティブの先生と話す機会を設ける、同じ学校の留学生と英語と日本語のエクスチェンジをするなど、努力次第で日本にいながらも英語を身につけることは可能です。留学にこだわらなくても、日常の中で英語に触れる機会を増やしていけば良いのです。
TOEICに固執しない
日系航空会社やアジア系航空会社の多くがTOEICの点数を英語力の基準にしているのに比べ、多国籍のクルーが在籍する中東系や欧州系などの外資系航空会社は、「英語が堪能であること」を基準としています。それは、入社後の訓練が全て英語で行われることと、多国籍のクルーとのコミュニケーションを円滑にとれる必要があるためで、点数にはこだわらず実際の会話力や英語での対応力を重要視しています。
また、TOEICの点数を基準にしている日系やアジア系航空会社においても、英語の面接試験や英語での訓練を行う会社も多くなっています。それは、たとえTOEICの点数が高得点であっても会話力が乏しい人もいるため、英語でどのくらいのコミュニケーションがとれるのかということを判断する材料としているのだと思います。
TOEICは、何度も受験を繰り返したりコツをつかんでしまえば、高得点を得ることができるとも言われており、実際の英語でのコミュニケーション能力や対応力に比例していないこともよくあります。そのため、TOEICの点数に固執しすぎてしまうこともよくありません。
おすすめの英語学習材料
英語の勉強におすすめの学習材料を幾つかご紹介します。どれも気軽に好きな時間に無料で利用できるので、ぜひ活用してみてくださいね。
CNN Students News
アメリカCNNニュースで放送された世界の時事情勢題材にしながら学生にわかりやすく説明する番組。英語の聞き取りや新しい単語を学ぶだけでなく、時事問題の基礎的知識を学ぶことができる一石二鳥の番組です。
BBC Learning English
初心者が英語を学ぶ際にぴったりの学習教材。生活に密着した様々なシーンに合わせて使える英語を学べます。CNNとは違ったブリティッシュイングリッシュを学ぶことができます。使用する単語や綴りもアメリカンイングリッシュとは異なりますので、英語の幅が広がります。
TED
様々な分野の英語プレゼンテーションを視聴できます。講演者一人一人の話すスピードやアクセントも違うため聞く力をつけることができます。専門的な単語に出会うことも多く、興味深い内容が多いので英語だけでなく多様な知識と面接にも役立つプレゼンテーションの知識を得ることもできます。
NHKラジオ英語講座
レベルに合わせたコースが用意されており、基礎からビジネス英語まで学ぶことができます。ストリーミングにも対応しているので聞き逃してしまっても安心です。
まとめ:英語やTOEICに苦手意識がある方に応援メッセージ
客室乗務員を目指す上で、英語力は必須項目のひとつであると言っても過言ではありません。それでも、英語が苦手、TOEICが苦手という人は、自分にあった勉強法を見つけることからはじめましょう。
TOEICは、受ければ受けるほど、コツを掴んで点数を上げていくことができます。TOEIC試験はほぼ毎月開催されています。TOEICに対する苦手意識をなくすために、過去の問題をたくさんこなしながら何度か受けてみることをおすすめします。何度かTOEICを受けていくうちに、どのような分野が得意でどのような分野が苦手なのかがわかってくると思います。まずは自分の苦手な分野を知ることが大切です。そして、苦手な分野に集中して勉強することで、点数を伸ばしていくことが可能になります。
会話力についても、難しく考える必要はありません。まずは、英語の面接試験を目標にして自分のアピールポイントを英語でまとめてみましょう。簡単な単語を使ってシンプルな文章でも自分らしくしっかりとアピールできればいいのです。
また、外資系航空会社を目指す人は「英語が堪能であること」だけでなく、「美しい日本語を話せること」を重要とされています。英語力だけにとらわれるあまり日本人であるという感性を忘れてしまわないように、なぜ外資系航空会社で日本人を必要としているのかというところも考えてみてくださいね。
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この記事を書いたCA(客室乗務員)は・・・
桜子さん
海外の大学へ留学後、旅行やビジネスコミュニケーションの仕事を経験し、日系航空会社の客室乗務員へ。アジア・中東・欧州での生活経験あり。