チーフパーサーとは、客室全体を統括する責任者です。コックピットに乗務する運航乗務員との連携を含め、客室乗務員に的確な指示や指導を行い、適切なサービスを提供し客室の安全を確保するのがチーフパーサーの仕事です。
チーフパーサーになるには、日々異なるメンバーで乗務する客室乗務員の個性を見出したり、すべての客室乗務員が活き活きと乗務できるような働きやすい環境を作ったりするほか、人材育成を行える能力や、さまざまな出来事への柔軟で的確な対応力や判断力、決断力など幅広い能力が必要になります。
チーフパーサー経験者は、チーフパーサー の仕事について「一便にたった一人という責任のある仕事であると同時に、魅力にあふれややりがいのある仕事」と声をそろえます。
そこで今回は、客室乗務員としてのキャリアを積むならぜひ目指したい、チーフパーサーについてご紹介します。
客室乗務員になってからのステップ
客室乗務員になってからチーフパーサーを目指すにはさまざまなステップがあります。
- 国内線・国際線のエコノミークラスに乗務して経験を積む
- 10名前後で構成されるグループ(班)のグループリーダー(班リーダー)や他の客室乗務員の模範となるような人が選ばれるクオリティリーダーに任命される
- 国際線の上位クラスでの乗務においてスキルを磨く
- 国内線のパーサー資格や国際線のクラス別パーサー資格を取得
- チーフパーサー資格を取得
このように、一見難しそうに見えるチーフパーサーへの道のりは、客室乗務員としての経験を積み適性を磨くことで誰にでも開かれているのです。
客室乗務員とチーフパーサーの違いって何があるの?
では、チーフパーサーと一般客室乗務員の違いとはなんでしょうか。
仕事内容
一般の客室乗務員はサービス要員としての役割と保安要員としての役割を担います。
チーフパーサーは、客室全体の責任者としてサービスと安全の両方の面からフライトを統括する役割を担います。
コックピットに乗務する運航乗務員と連携をはじめ、乗務する客室乗務員への的確な指示や指導、適切で高品質なサービスの提供、客室の安全の確保など、その役割は多岐にわたります。
乗客からクレームを受けたり客室で問題が発生した際など、客室で起こるさまざまな出来事への柔軟で的確な対応を行い、時には重要な決断を行う必要もあります。
また、乗務するすべての客室乗務員が円滑な業務を行えるような環境づくりのほか、人材育成など、客室乗務員としての経験や判断力、行動力、決断力など、いくつもの能力が必要な仕事です。
見た目の違い
一般の客室乗務員が客室各所に配置されているのに対し、チーフパーサーは「L1ドア」と呼ばれる機体最前方左側にあるドアの近くに着席します。
どの航空会社のどの飛行機もチーフパーサーはこの「L1」に着席します。
また、航空会社によっては異なる色の制服やスカーフを着用し、乗客からもチーフパーサーであることがわかるようになっている場合もあります。
例えば、JALの場合はチーフパーサーであることがひとめでわかるよう異なる色の制服を着用しています。
ANAの場合は制服に違いはなく胸元につけているバッジで判断することができます。
外資系航空会社も同様で、胸元にチーフパーサーであることを示すバッジをつけていたり、異なる色の制服を着用していたりスカーフの色が違ったりします。
年収や福利厚生
チーフパーサーになるとチーフパーサー手当てが支給されるため、一般の客室乗務員より年収が増えます。
また、チーフパーサーになるにはある程度の勤続年数とさまざまな役職を経験している必要がありますので、基本給においても一般の客室乗務員に比べて高い傾向にあります。
福利厚生においては一般の客室乗務員と同様の待遇となっている場合が多いですが、外資系航空会社の中には、フライトの希望を出しているときや休暇の希望日が重なってしまったときなどには、チーフパーサーなど上位の役職を持つ人が優先されるということもあります。
客室乗務員がチーフパーサーにステップアップする方法
客室乗務員として乗務をはじめてからチーフパーサーにキャリアップするには、いくつかのステップがあります。
日系航空会社では、入社後約3~5年すると国内線のチーフパーサー資格や国際線のクラス別パーサー資格を取得することができます。
※JALやANAなどのグループ子会社の場合は、1年目やCAになって早い時期に専任客室乗務員(客室責任者)を取得することもあります
また、入社後7年目頃には適性に合わせて国際線のチーフパーサーの資格を取得することができます。
外資系航空会社では経験や適性に合わせて入社後約5年するとチーフパーサーの資格を取得できる機会を与えられる航空会社が多いです。
チーフパーサーになるには昇格試験やそれにともなう訓練があ利、この訓練と試験に合格する必要があります。
チーフパーサーになった客室乗務員が求められること
チーフパーサーになった客室乗務員の役割は多岐にわたり、周りから期待されることも増える上、求められる仕事の内容も高まります。
一流のおもてなし
すべての客室乗務員の模範となるような細やかな気配りや目配り、ひとりひとりの乗客に合わせた柔軟な対応や的確なサービスなど、一般の客室乗務員よりさらに高度で上質な一流のおもてなしが求められます。
リーダーシップ
フライトごとに乗務する客室乗務員の人数は変わりますが、中型機の場合で12~15名、A380のような大型機の場合多いときでは約25名もの客室乗務員が乗務します。それぞれの個性を活かし適材適所でより良いフライトを作るために、広い視野を持ち客室全体を統括するリーダーシップ能力が必要です。
人材育成
入社したばかりの新人客室乗務員、上位クラスを担当する客室乗務員、パーサー資格やチーフパーサー資格を目指している客室乗務員など、ひとつのフライトには経験値の異なる客室乗務員が乗務しています。乗務するすべての客室乗務員が円滑な業務を行えるような環境づくりのほか、それぞれの個性を伸ばし適性を磨き、アドバイスや気づきを与えて成功体験を促すなど日々のフライトにおいての人材育成も重要な役割となっています。
チーフパーサーならではのやりがい
チーフパーサーは一便に一人だけという責任の大きな仕事です。客室乗務員をまとめて高品質なサービスを提供するだけでなく、客室全体の安全を守らなくてはなりません。
客室全体、客室乗務員全体を丁寧に見渡し、乗客ひとりひとりの多種多様なニーズに合わせた上質なサービスを提供し、すべての客室乗務員が個性を活かして活き活きと乗務できるよう日々追求しながらより良いフライトを作り上げることは、チーフパーサーならではのやりがいです。
おわりに
いかがでしたか?
客室乗務員からチーフパーサーになるためにはいくつかのステップがありますが、客室乗務員としての経験を積み日々フライトと向き合うことで誰にでも開かれているキャリアパスであることがわかります。
客室乗務員になることが夢でその先のキャリアパスを描けていない人もいるかもしれませんが、客室乗務員になるからにはチーフパーサーを目指す!という強い思いでキャリアパスを描くとより鮮明な客室乗務員像が見えてくるのではないでしょうか。
こちらの「客室乗務員の役割」に関する記事も参考になりますのでご覧ください
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この記事を書いたキャビンアテンダントは・・・
桜子さん
海外の大学へ留学後、旅行やビジネスコミュニケーションの仕事を経験し、日系航空会社のキャビンアテンダントへ。アジア・中東・欧州での生活経験あり。