接客・サービスのプロと言われる客室乗務員の方から見て、病院やクリニックなど医療機関の患者対応・接遇はどのように感じられますか?
接遇で気になる点などあれば教えてください。
A.医療機関は、「話しかけにくい雰囲気」があるところ
回答をしてくれたキャビンアテンダント
ユカさん
大学卒業後、客室乗務員として国内大手航空会社へ就職。人材サービス会社の事務職を経て、現在はフリーランスのライターとして活躍中。
医療機関は、「話しかけにくい」「言いにくい」
医療機関で一番気になる点は、話しかけにくい雰囲気があるところです。診察や治療内容なども医療用語が多く、検査などでも事前の案内や説明がないことがあります。今どのような状態でどんな治療をしていくのか、疑問に思ったり質問をしたりしたくても、言われたことが絶対で患者側からは言い出せません。
待合室で困っている人に声掛けをする機会も少なく、医療機関の人よりも周りの患者の方が教えてくれたり助けてくれたりすることが多いのも問題だと思います。
スタッフ同士のコミュニケーションが少ないのでは?
医師や看護師などそれぞれが専門職であり、携わる範囲も決まっているので仕方がないのかもしれませんが、相互のコミュニケーションが少ないと感じます。何か質問しても、「それはあちらで聞いてください」「こちらでは分かりません」などと言われることがあります。常に患者側がアクションを起こさなければならず、結果的にたらいまわしにされた印象が残り、分かりずらさを感じさせていると思います。
患者への対応や環境の整備などは専門知識とは関係のないものです。治療の方針などは医師にしか決められないのかもしれませんが、患者の疑問点や悩みを聞いて伝えることは誰にでもできます。私の業務じゃないという意識は見ている患者にも伝わり、医療機関全体のぎすぎすした雰囲気を作り出しているのだと思います。
医療従事者の当たり前は、患者の当たり前ではないことを知ってほしい
医療機関には、様々な事情を抱え、不安な気持ちで訪れている人がほとんどです。日々患者に接し、多くの症例を見ている医療従事者にとっては大したことないと思うような事例でも、医療機関を訪れた患者にとっては一大事かもしれません。
患者の気持ちに寄り添う姿勢や気軽に話しかけやすい雰囲気づくりは、医療機関での接遇において徹底してほしいと思います。
A.接遇力アップを目指すなら患者さんの目線に立つ、親身な姿勢が必要。
回答をしてくれたキャビンアテンダント
涼子さん
国内系大手航空会社の国際線客室乗務員として10年以上勤務し、世界中をフライトで飛び回る。世界の大都市・グルメ・音楽・カルチャーに関心を持ち、結婚に伴いヨーロッパでの海外生活を始める。翻訳・通訳歴も数年あり、英語・ドイツ語はビジネスレベル。
医師の接遇は気になる
個人的に、全体的に看護師やアシスタントの方は感じの良い接遇が多いとは思いますが、逆に記憶に残るような素晴らしい接遇や個を意識してもらっているというような印象は特にないのが正直な印象です。診察の予約や薬の処方などだけで、あまり長い時間接点があるわけではありませんしどちらかといったら当たり障りがないというイメージでしょうか。
一方診察時の医師の接遇に関してはあまり良い印象がないのが正直なところです。診察室に入ったらうつむいて前の患者さんの打ち込みを延々と続ける先生の前に座り作業が終わるまで待たされたり、専門知識のない自分が説明する症状や不安な内容を最後まで聞いてもらえず、診察結果を断言され早く診察を終わらせようとしている印象を受けたり。あと厳しそうな男性医師に看護師の女性がすごく気を遣っているのがひしひしと伝わり、患者としてそこにいる事があまり居心地良くない事も少なからずあります。
ドイツの医療事情
日本に比べ今私が住んでいるドイツはだいぶ雰囲気が違います。こちらでは基本的に最初から「病院」のような大きな医療機関には行かず、まずはかかりつけの医者か専門のクリニックにかかることがほとんどです。病院は紹介状などを書いてもらってから行くか緊急時にかかるくらいでしょうか。
診察室はどこも必ず個室になっており、大抵医師は診察室のドアを開け、始めに自分から名乗り患者と握手をして診察室に招き入れます。歯科でも診療台が一つ設置された個室で歯科医とアシスタントと自分だけの部屋で治療を行いますし、日本でたまにあるように診療台の間が小さな仕切りだけだったり、診察室の入り口がカーテン一枚で診察中の会話が外に漏れたりすることは決してありません。
子連れで行っても、子供を抱っこしながら歯の治療をしてもらったりアシスタントの方にあやしてもらったりかなりプライベート感がありますね。急を要する時以外は、予約なしでは基本的に診てもらえませんので当日まで待たなければなりませんが、その分待合室があふれ返る事もなく、診察も医師と納得がいくまで話せますので信頼感、安心感があります。
医療機関で患者が期待することとは?
医療機関でカスタマー(患者)が期待する商品はまず正確で安全、さらに信頼のできる医療施設・医療行為だと思いますが、そこに医師・看護師・薬剤師など人によるサービスが加わる事によって、患者個人に合わせた分かりやすい説明やアドバイスを付加価値として提供できます。時間がないとしても、患者と対応する際の安心感を与える笑顔や、親身になって聞く姿勢というのは大きく印象を変えます。医療機関と患者を結ぶ信頼関係の構築にはとても重要なステップではないでしょうか。
A.職業病で、プライベートでもついつい気になる接客や対応を見てしまいます・・・
回答をしてくれたキャビンアテンダント
美咲さん
大使館での秘書業務を経験後、海外エアラインの客室乗務員に転職。結婚と夫の海外赴任に伴い、客室乗務員を退職し、現在はヨーロッパ在住。
接客のプロといわれると少し気恥ずかしい気持ちになりますが(笑)、
医療機関に訪れるとお医者さんから看護師さん、薬剤師さんなどその道のプロにお会いします。客室乗務員の訓練中にメディカルの訓練も受けますので、それより多くの医療知識がある彼らをとても尊敬していますし、いざという時の応対も処置もすばらしいので見習うべきことが多いな、と感じています。
一方で接遇ですが、気になる点もちらほら…。
あるとき体調がすぐれず病院に行きました。その際のお医者さんの対応がとても冷たく感じたのを覚えています。もちろんお医者さんはプロで知識も豊富。一方こちらは病気に関しては一般人。聞きたいことも不安なこともたくさんあったのに、質問を遮るように話され、しかも上から目線。解答もなんとなく専門用語のようなわかりづらさが残り、結局聞きたいことはわからずじまいでその日が終わりました。病院に行く際は健康になることももちろんですが自分の疑問も解決して不安から解放されたいですよね。
それなのにその時のお医者さんは自分の「患者を治す」という義務だけ淡々とこなしている印象でした。もちろんすべての医療関係者がそうではないですし反対に期待以上の対応をしてくださった方も中にはいらっしゃいます。
でも、人って嫌なことをされてしまったらその印象を変えるのは難しいですよね。そのため、エアラインの顔でもある客室乗務員は、お客様にこのエアラインは最悪だ!!と思われないよう、気を付けていくことが大切だと思っています。
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